1/29、日刊自動車新聞が、マツダが『SKYACTIV-X』エンジンの開発、生産を終了することを報じました。
SKYACTIV-Xとは
『SKYACTIV-X』は、同社の『SKYACTIV-G』、『SKYACTIV-D』に次ぐ、第3のマツダSKYACTIV TECHNOLOGYを採用した次世代エンジンです。
燃料はガソリンを使用。
乗用車用量産ガソリンエンジンとして、世界で初めて予混合圧縮着火を実現させました。
予混合圧縮着火とは、燃料と空気の混合気を圧縮して、ディーゼルエンジンのように自然着火させる技術で、ピストンエンジンの究極形と言われています。
しかし、ガソリンエンジンでは、高負荷時や高回転時の予混合圧縮着火は困難であるため、高負荷時は圧縮した混合気に点火プラグを用いて着火します。
高い圧縮比とすることで、リーンバーン(希薄燃焼)を実現。低回転から高回転まで少ない燃料で高効率な燃焼を可能にしています。
なお、空気の圧縮にはスーパーチャージャーが使用されています。
燃費は、『SKYACTIV-G』に比べて約10%向上。
低車速時のスーパーリーンバーン(超希薄燃焼)領域では約20%向上しており、ディーゼルエンジンの『SKYACTIV-G』よりも高燃費を実現しています。
SKYACTIV-X搭載車種
『SKYACTIV-X』は、2.0L直列4気筒エンジンのみが市場に投入されています。
『SKYACTIV-X』は、2019年にフルモデルチェンジした『MAZDA 3』にモデルチェンジ当初から、また、2019年に発売された『CX-30』に、2021年から搭載されました。
現在、『CX-30』には『SKYACTIV-X』を搭載したモデルはなく、『MAZDA 3』にのみ搭載されています。
SKYACTIV-Xの課題
“夢のエンジン”だった『SKYACTIV-X』ですが、搭載車種が増加しないのは、コストと燃費の課題があるためです。
まずコストについてですが、部品点数が増加することにより、価格が上がってしまっています。
『MAZDA 3 FASTBACK』で見てみると、『SKYACTIV-G』を搭載した2.0Lエンジン+マイルルドハイブリッドのAT、4WDモデルが303.6~322.7万円。
『SKYACTIV-X』を搭載した2.0Lエンジン+マイルルドハイブリッドのAT、4WDモデルが396.4~398.6万円となっています。
機能や内装の質なども高められているのでしょうが、かなり大きな価格差があることがわかります。
次に燃費についてですが、同じく『MAZDA 3 FASTBACK』のWLTCモード燃費を見てみると、『SKYACTIV-G』を搭載した2.0Lエンジン+マイルルドハイブリッドのAT、4WDモデルが15.9km/L。
『SKYACTIV-X』を搭載した2.0Lエンジン+マイルルドハイブリッドのAT、4WDモデルが16.7km/Lとなっています。
確かに燃費は良くなっているのですが、価格差を考えると物足りないですよね。
『MAZDA 3 FASTBACK』と同じくらいのサイズの車として、トヨタ『カローラ スポーツ』と比較してみると、2WDモデルにはなってしまいますが、2.0Lエンジンモデルの価格が221.0~272.8万円で、WLTCモード燃費が18.3km/Lとなっています。
また、1.8Lエンジン+ハイブリッドのモデルの価格が247.0~297.8万円で、WLTCモード燃費が27.2~30.0km/L。
『カローラ スポーツ』の、エンジンモデルとハイブリッドモデルの価格差が25万円程度。燃費が8.9~11.7km/L向上と考えると、やはり『SKYACTIV-X』のコストパフォーマンスが低いことがわかります。
これだと、(ストロング)ハイブリッド車に流れてしまいますよね。
SKYACTIV-Xの行く末
“夢のエンジン”である『SKYACTIV-X』ですが、こうやって纏めてみると、コストパフォーマンスの悪さが目につきます。
これが、ロータリーエンジンだったりすれば、価格が高かろうが、燃費が悪かろうが、根強いファンが購入するのでしょうが、『SKYACTIV-X』にそれだけのファンがつくとは思えません。
はじめから『SKYACTIV-X』に興味を持ってディーラーに行く人は、よっぽどの車好きなのではないかと思われます。
マツダが『SKYACTIV-X』の宣伝に用いている「力強いトルク、リニアで正確なレスポンス、高回転までスムーズに伸びていく爽快な加速感」を、試乗で体感してもらい、約90万円の価格差を納得してもらえるかと考えると、販売側としてはつらいところではないかと…
そう考えると、今回の『SKYACTIV-X』開発、生産終了という話も致し方ないことなのかと思われます。
エンジンの開発にはかなりの投資が行われていると思いますが、『SKYACTIV-X』で培った技術を今後のクルマ作りに活かして欲しいなと思います。
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