10/30、コロナ社より、『騒音・振動の計測と制御: 理論から自動車開発の実用例まで』が発売されました。
自動車の騒音・振動の開発を具体的な実用例として取り上げ、計測と解析に必要なディジタル信号処理と振動工学・音響工学を同時に学べる1冊。
また、騒音・振動のアクティブ制御について学べる。
概要
本書の特徴は2つある。1つ目は,自動車の騒音・振動の開発を具体的な実用例として取り上げ,1冊の教科書で計測と解析に必要なディジタル信号処理と振動工学・音響工学を同時に学べることである。2つ目は,騒音・振動のアクティブ制御を学べることである。
第一の著者(佐野)は,機械工学の大学院修士課程を修了してHondaに入社し,自動車の騒音・振動を低減する研究開発の仕事に就いた。学生時代,振動工学は学んでいたので振動の知識はもっていたが,音の知識は高校の物理で止まっていた。仕事では,振動工学だけではなく音響工学の知識が必須だった。さらに,計測業務では,FFTアナライザに出てくるパワースペクトル,クロススペクトル,コヒーレンスなどの数多くの難解な専門用語に圧倒された。先輩に音響工学の教科書を教えてもらい,すぐに購入して勉強するとともに,計測器メーカの講習会に参加し,FFTアナライザを用いた計測と解析に必要なディジタル信号処理を学んだ。
なぜ,計測と解析に必要なディジタル信号処理,振動工学,音響工学が一つになった教科書がないのだろう,と疑問に思った。そして約40年が経過した現在もこの状況は変わっていないことがわかった。退職後に時間ができたので,それならば自分で書こうと決め,本書の執筆に至った。
騒音・振動の低減は,外部からエネルギーを注入しないパッシブ制御が基本である。一方,外部からエネルギーを注入して低減する方法をアクティブ制御と呼ぶ。どちらも制御がキーワードになっている。第一の著者は,宇都宮大学社会人ドクターコースで第二の著者である足立修一先生のもとでアクティブ騒音制御(以下ANC)の研究を行った。本書の柱はパッシブ制御とするが,アクティブ制御も記述するという方針を立てた。
足立先生は,フーリエ解析やラプラス変換などを解説している信号・システム理論や,ディジタル信号処理の教科書をすでに書かれており,これらはとてもわかりやすかった。そして,制御がご専門なので,騒音・振動のアクティブ制御の記述でもご助言いただきたかった。そこで,第二の著者を足立先生にお願いし快諾していただいた。第二の著者には,制御工学の立場から振動・音響理論を俯瞰することで,統一的に解釈する手立てを見つけていただいた。そして,キーワードは,振動理論ではラプラス変換による「伝達関数」,音響理論では「制御工学から観たANC」であった。振動工学の章では,伝達関数を用いた振動理論の説明を試み,騒音のアクティブ制御の章では,制御工学の立場からANCを解説した。振動工学や音響工学においても制御工学の考え方を利用すると,計算や理解が容易になることが読者はわかるだろう。
騒音・振動に関する計測,パッシブ制御,アクティブ制御を1冊の本で統一的に取り扱ったのはおそらく初めてだと思われる。第一の著者が自動車の騒音・振動開発の現場で学んだ経験に基づき,騒音・振動の技術者や研究者に必要な理論を1冊にまとめた。本書が騒音・振動の実務や研究に携わる皆さまに少しでもお役に立てば幸いである。

コメント